当センター人間拡張学部門の栗田 雄一教授と株式会社アプリクラフトは、“Grasshopper(※1)による高付加価値・触感デジタルデザイン”のための触感デジタルモデル作成アルゴリズムを作成し、このアルゴリズムを搭載した触感デジタルデザイン支援ツールを、2020 年3月にウェブページで一般公開しました。(本学プレスリリース

 Grasshopper 定義ファイルは、それぞれ“01-Minamo(水面)”、“08-Uroko(鱗)”など、生物的・有機的なデザインを意識したテーマを設定しており、定義ファイル内のパラメータを変更することで、各テーマのエッセンスを維持しつつも、細部が異なる触感サンプルを生成することができます。

みなも
01-Minamo
uroko
08-Uroko

 また、生成された3D モデル表面の触感を想像しやすくするために、触感評価・可視化技術(※2)を活用して、3D モデルデータから手で触ったときに感じる粗さ感に影響する表面高さや傾斜角度の情報を計算し、その強度をカラー表示する機能を有しています。生成されるデジタルモデルは、CAD・CG において最も一般的なデータフォーマットの一つの“Rhinoceros”(※3)の“.3dm”です。“.3dm”は、代表的な中間フォーマットである“IGES”や“STEP”等にも変換することが可能であり、“STL”や“3DS”等のポリゴンデータに変換することで、3D プリンターで容易に造形することも可能です。
 調査の限り、3D デジタルモデル作成において、“触感”という視点から、形状情報を可視化する機能を有したデジタルデザイン支援ツールは世界初です。

 触感には確立された評価指標が存在しないため、感覚を正確に他者とシェアすることができず、良い触感/悪い触感に関する知見やノウハウが承継されていません。今回作成された触感デジタルデザイン支援ツールは、栗田教授が研究している触感の可視化・定量化技術をベースに、さまざまな触感を持つ試作サンプルを手軽に製作できることから、教育・研究や、プロダクトデザインの現場で利用されることを期待しています。

 今後、インターネット通販等で商品を購入する機会はますます増えていくことが予想されます。触感評価が普及し良い触感が正しく評価されることで、消費者が安全で使いやすく、また自分好みの品を確実に手に入れやすくなることに貢献します。

【参考】

(※1)Grasshopper
米国シアトルのRobert McNeel & Associates社が開発元の3次元曲面モデラー“Rhinoceros”に含まれる機能の一部です。また“Grasshopper”は、GAE(Graphical Algorithm Editor)とも呼ばれ、視覚的にデジタルモデルを生成するアルゴリズムを作成することができ、コンピュテーショナル・デザイン、あるいはジェネレーティブ・デザインと呼ばれるコンピューターを使用したデザイン手法を実現するツールとして国内外で広く認知されています。

(※2)触感評価・可視化技術
栗田研究室が推進している触感評価技術の開発とコンピュテーショナル触感デジタルデザイン研究の紹介ページ(http://www.bsys.hiroshima-u.ac.jp/~kurita/work_j_digitalhapt.html )

(※3)Rhinoceros
フリーフォーム NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline:非一様有理 B スプライン)モデリングに特化した商用の製造業向け 3 次元 CAD ソフトウェア(3D サーフェスモデラー)です。開発は Robert McNeel &Associates で、日本での販売はアプリクラフト社により行われています。

【webページ】

【研究サポート】

  • 文部科学省革新的イノベーション創出プログラム(COI)「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」(JPMJCE1311)
  • 科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業さきがけ(「社会と調和した情報基盤技術の構築」研究領域)
  • 東広島市政策課題共同研究事業