当センターの前川亮先生が、日本心理学会第84回大会(2020年9月8日(火)―11月2日(月)・ウェブ開催)で行われたポスター発表において、「内受容感覚の個人差と音楽聴取時の心拍変動の関係」というテーマで発表を行い、学術大会優秀発表賞を受賞しました。

 感情は身体状態に依存するものであり、身体状態を知覚する内受容感覚(図1)が感情生起の基礎にあるとする考え方が提唱されています。一方、音楽によって生じる感動はゾクゾク感などの身体感覚を伴うことから、音楽による感動には身体状態および内受容感覚が影響することが予測されます。

(図1)内受容感覚とは

 この仮説を元に本研究では、音と心拍のタイミングの一致を弁別する心拍弁別課題を用いて内受容感覚を測定するとともに、音楽聴取時の感動評定を行って心拍課題と比較することで、内受容感覚の個人差が感動に与える影響を調べました(図2)。

(図2)今回行った実験

 この結果、心拍弁別課題の成績と感動評定値の大きさに相関があることがわかりました。さらに、音楽聴取時の心拍の変化を解析すると,心拍弁別課題成績の高いグループは、より大きな心拍数の変化を生じた音楽に対して高い感動評定値をつけていました。一方,心拍弁別課題成績の低いグループではこの傾向はみられませんでした。これらの結果は(図3)、自身の心拍のタイミングをより正確に知覚している人は感情評定時に心拍の状態を参照する傾向が強いことを示唆しており、感動が内受容感覚入力の変化から生じるという仮説を支持しています。

(図3)

今大会では、全ポスター発表904件中、投票によって審査が行われました。

【発表に関する情報】
第84回日本心理学会(http://jpa2020.com/
タイトル:内受容感覚の個人差と音楽聴取時の心拍変動の関係
     Relationship between interoceptive sensitivity and heart rate      changes during listening to music
発表者:前川亮・笹岡貴史・乾敏郎
キーワード:内受容感覚,感情,心拍
      Interoceptive sensitivity, emotion, heart rate